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ホームエデュケーション Q&A

Q1 ずっと家にいることを許しても社会性は大丈夫なのでしょうか?

A1 ホームエデュケーションについて社会性を心配する方はたくさんいらっしゃいます。それはおそらく、学校や社会生活に挫折を感じて他者との交流を避けたり、家庭にこもったりする人が多いせいだと思います。もし、そうだとしたら、その人がそうなったのはホームエデュケーションのせいでしょうか?

 一度大きな挫折や不適応を味わった人が他者との交流を避けたり、家庭にこもったりするのは、たぶん「懲りて」しまったのではないでしょうか。それが原体験となってしまってはいないでしょうか。だとしたら、その人が再び他者や自分自身への信頼を取り戻すためには、単にその人を外の世界に出せば良い、学校に戻せば良い、ということにはならないでしょう。

 ホームシューレでいちばん求められている活動は「交流」です。学校ではうまくいかなかったけれど、もういちど友だちをつくりたい、安心できる自分の居場所が欲しい、自分を価値ある存在として受け止めてもらいたい・・・。そういう思いで、緊張しながらも少しずつ人と関わっていこうとする人が多いです。

 子どもの社会性を犠牲にするためにホームエデュケーションを選ぶ親はいません。むしろ、子どもの社会性が再び発揮できるようにと選んでいると思います。

Q2 昼夜逆転で好きなことばかりしている子どもの生活が荒んでいて心配です。

A2 学校へ行かなくなった子どもの多くは、一度はそのような状態を経験します。まるで「うつ状態」そのものに見えたり、食欲が失せたり、不安で眠れなくなったり、昼夜逆転したり、感情の起伏が激しくなったり、趣味に異常なほど没頭したり、部屋に立てこもったり・・・。

 それは、なぜでしょうか。たぶん、ものすごくガッカリしたんじゃないでしょうか。学校、友だち、先生、世の中、そして自分自身。少し大人に近づいて、家庭の外の世界に触れ、その子なりに努力した結果、残念ながら心のエネルギーが切れ、大きな喪失感とともに家庭に戻ったのではないでしょうか。

 心のエネルギーが切れたら、すぐには明朗快活に動けたりしません。気持ちが落ち込んだら、日常生活もしんどくなります。そんなときに正しい生活習慣を求めても、それを実行するだけのエネルギーがないと続けられないのです。そこに至るまでがどうだったにせよ、その時点では明朗快活に動きたくても、それだけの心の状態にないのです。頑張った子どもほど、そうなりやすいのです。

 子どもの生活の荒み方は、その子どもの心が反映されてはいないでしょうか。だとしたら、生活習慣の改善の前に、子どもが好きなことから徐々に始めるほうがいいでしょう。「好きなことしかしない」と嘆いている人は、「好きなこともできなくなった」場合と比べてみてはいかがでしょうか。

Q3 子どもの学力が心配です。最低限の基礎学力くらいは身につけさせたいです。

A3 「基礎学力」というと、「基礎的な学ぶ力」と解釈してしまいそうですが、基礎学力は学校などで身に付けた諸教科の基本となる知識や技能を指すことが多いようです。そのような学力を身に付けるためには、そのさらに下にある「学びの基礎」というべきものを先に身に付ける必要があると思います。

 たとえば病気やケガに苦しむ人は学習どころではありません。それらを治癒することが学習への近道です。安全を脅かされている人も、安全を確保することが学びの基礎につながります。

 「家族から問題児扱いされていないかどうか」「人間関係への不安や恐怖心は和らいでいるかどうか」「学習に意欲的に向かおうとするだけの心の余裕があるかどうか」などは、基礎学力獲得の際、大きく影響します。

 「ホームエデュケーション」といいますと、なんだか在宅の通信教育のようなイメージがあるかもしれませんが、在宅で学校のような教材を使った教育が継続的に実施可能な家庭は1割にも満たないでしょう。実施したとしても、「学びの基礎」がなければ、かえって勉強嫌いになってしまうかもしれません。

 ホームシューレで教科学習を積極的にしている人たちの多くは、学びの基礎ができており、そのうえで「高認取得や受験を目標にしている人」「すでに進学している人」「趣味で習い事をしている人」「家庭教師に教わっている人」「目的意識や動機があって学習している人(ホームシューレの学習サポートなど)」です。基礎学力を身につけるためには、まず学びの基礎を固めていくところからだと思います。