遅く始める利点

 学科の勉強では、不登校によるブランクは圧倒的に不利だと考えがちです。本人がそれをいちばん気にしていたりします。でも、ホームシューレの子どもたちの勉強を見ているとそうでもない気がします。
 たとえば、学校では中学一年で負の数を勉強するのですが、ハイティーンの子が初めて負の数に接するとき、意外なことに苦労が少ないということを発見しました。
 負の数というのは、商業が盛んなインドかアラビア半島で、負債を表示する目的でその概念が生じたらしいです。ほんの200年ぐらい前まで、ヨーロッパでは負の数の概念を受け入れない数学者がいたそうです。
あのパスカルが「私は0から4を引けば、0であることの分からぬ人を知っている。」と、負の数を数学に導入したデカルトを非難していたそうです。それぐらい、負の数は実は論理的な納得がしにくい、実務的な概念なのです。
 たとえば17歳は13歳と比較するとお金との接点が歴然と大きくなります。親から決まった金額のおこづかいをもらっていて、でもどうしても欲しい買い物があって、不足する金額を親から前借をする・・なんていう経験もあるかもしれません。
 金銭への関心が高まり、アルバイトをしてみたくなるのもハイティーンあたりではないでしょうか。お店が発行するポイント制度とか、ゲームや賭け事に直接間接に接する機会があれば、マイナスという概念はすでに利用していたりするので、負の数をすんなりと受け入れることができるのです。

 大好きな歌手の歌に英語が入っていたり、その意味を知りたくなったりするのもまあ15歳以降である場合が多いので英語だって「遅く始める利点」があるのです。何よりも、「外国を知りたい」という意欲が高まりモチベーション高く英語に接するのは、ハイティーン以降である場合が多いでしょう?

 英才教育という言葉があり、幼少期に学習の機会を失うとあたかも致命的であるかのような学説もありますが、私は疑いを持っています。プロスポーツや音楽家ならともかく、社会生活に足りる学識に「手遅れ」なんて存在していないと思うのです。
 嘘だと思うなら、おとなもやってみて実感してください。中学一年生の参考書や教科書を、雑念を持たずに読んで理解することを試みてください。むずかしいけど、ちゃんとわかるように書かれていることに驚くでしょう。私たちは中学一年生のときには、この文を読解する能力がなかったが今はある、ということです。

「遅く始めた利点」をいかに活かすか?
 これが私たちの学習サポートの大きな鍵だと、私は思っています。

(学習サポート担当スタッフ:岡崎徹夫)